法律問題を解決するためには
多くの場合、金銭や財産の移転を伴うため
必然的に課税リスクが伴います。

相続問題はその典型です。

そうすると、話し合いで相続問題を解決しようとする場合には
課税リスクを検討することが不可欠なはずですが
法律面ばかりに気をとられ
課税リスクをしないまま終結させてしまったばかりに
税の軽減措置を選択することができず、
結果として相談者が不必要な税負担を余儀なくされるといった事態が起きかねません。

相談者の方が
自身の相談内容が法律問題なのか
税務問題も含むのか認識できないのは当然としても、

解決にあたる弁護士にも税務には苦手意識があるせいか、
課税リスクや税務の手続を意識しないまま
終結させてしまったばかりに、例えば

  • 小規模宅地の特例の適用を受けるためには、
    申告期限から3年が経過するまでに調停を申し立てるなどの法的手続をとった上で
    税務署長に対し、遺産が未分割であることについて
    やむを得ない旨の承認申請をする必要があったにもかかわらず
     
    遺産分割調停の交渉を担当した弁護士が
    調停の申立てをせずに3年が経過したため、
    税務署長の承認が得られず、結果として、
    相続人は小規模宅地の特例の適用を受けることができなくなった事例

が発生しています。

また、遺留分侵害額請求には

  • 遺留分侵害請求を受けた相続人が、請求者の相続人との間で
    お金を支払う代わりに財産を与える内容で和解したものの
    民法改正後においては、税務上は譲渡となるため
    遺留分侵害請求を受けた相続人に新たに譲渡所得に係る所得税が課税されるリスク
があり
これを考慮しないで和解してしまうと
法律問題として終結させた後になってから
予期せぬ課税がされてしまいかねません。
  • 他の相続人から遺産分割協議の案が送られてきたが、応じた方が良いのか、わからない。
  • 亡くなった母の預金通帳を見たら、老人ホーム入居中に多額の預金が引き出されていた。

といったお悩みをお持ちの方は、ご相談ください。

法律と税務の両方から、相続問題についてサポートするとともに
相続税の申告を担当した税理士の先生との連携を図り
税務リスクの逓減に務めます。

所得税の確定申告を忘れずに

亡くなった方に収入がある場合
亡くなった日から4か月以内に
相続人人が亡くなった方に代わって
確定申告をしなければなりません
(所得税法125条)。

還付金が発生した場合には
相続財産を構成するので
還付金を含めて
遺産分割協議をすることになります。

相続開始後

相続税の申告・納付

相続税の申告・納付は
亡くなった日から10か月以内に行う必要があります
(相続税法27条)

しかも、
 ●配偶者が取得した相続財産が1億6千万円までは相続税が課されない
 という配偶者に対する相続税額の軽減措置
 (相続税法19条の2)
 ●土地建物等の相続税評価額が最大80%減となるという
  小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
 (租税特別措置法69条の4)

などの軽減措置を受けるためには
上記の申告として行う必要があります。

しかし、
 ●亡くなった方にどのような財産があったかの調査
 ●不動産や非上場株式の評価額をどのように計算するか
 ●納税資金の準備
といったことを考えると
10か月という期間は
相続税の申告準備という観点からは
非常にタイトといえるでしょう。

また、生命保険金のように
法律上は遺産ではないものであっても
相続税法上、相続税が課されるものがありますので(相続税法3条)

相続財産の評価額が相続税法15条に規定されている
遺産に係る基礎控除額の枠内に収まるかどうか
だけでも税理士の先生にご相談することをおすすめします。

遺産分割

協議

遺産に不動産などの分割が困難な財産が含まれている場合
遺産の取扱いについて
相続人間で意見が一致することは稀でしょう。

また、相続人のお住まいが散らばっている場合には
全員で話し合いをすることすら難しいでしょう。

さらに、相続開始後に相続人が亡くなる
という再相続が起きてしまうと
当事者が増加する一方で
被相続人との縁遠い相続人が
遺産分割に関与してくる結果
ますます遺産分割協議がまとまりにくくなります。

裁判手続

裁判手続を利用する場合
調停→審判
という順序を辿ることが多いです。

ややこしいのは遺産分割の
調停を行う裁判所
審判を行う裁判所
は必ずしも一致しないことです。

審判を行う裁判所は
被相続人が亡くなった方のお住まいを基準に決まります
(家事事件手続法191条)

これに対し、調停を行う裁判所は
申立人以外の相続人の住まいを基準に決まるので
(家事事件手続245条)

相続人が全国に散らばっている場合
どの裁判所に申し立てるかは申立人が選ぶことになります。

相続人間の関係性にもよりますが
遺産分割協議は長期間に渡ることが多く
裁判に出席するだけでも負担になりますので
弁護士に依頼することをおすすめします。

遺留分

遺留分侵害額の請求を考えている方

遺言書の内容によって
遺留分が侵害された相続人の方は
侵害された金額の支払いを請求することができます
(民法1046条)。

遺留分は相続人という法律上に地位に基づいて
認められている権利なので
余程のことがない限り
請求は認められることが多いです。

注意すべきは
遺留分侵害額の請求は
1年以内という期間制限があることです
(民法1048条)。

遺言書等が見つかったらすぐに
請求する意思を
内容証明郵便などの書面で通知してください。

もっとも、期間内に請求したからといって
請求額の支払いが受けられることも
タイムリーな支払も期待することは期待できません。
遺留分を算定する計算の基礎となる
 ●財産の範囲
 ●財産の金額
 ●支払方法や支払時期
に争いが生じるからです。

遺留分侵害額の請求を検討される方は
速やかに弁護士にご依頼ください。

遺留分侵害額の請求を受けた方

他の相続人から
遺留分侵害額の請求を受けた場合
金額については争いがあるとしても
多くの場合
要支払額をゼロにすることは難しいので
ある程度金銭を準備する必要があります。

注意すべきは
金銭の支払いではなく
不動産などの現物財産を引き渡して対応すると
税務上は譲渡とされ
その結果
金額如何によっては
新たに所得税が課される可能性があることです
(所得税基本通達33-1-6)。

したがって
遺留分侵害額請求を受けた場合において
和解する場合には
所得税の負担が発生しないように
できるだけ金銭で支払うようにすると良いでしょう。

相続税の更正の請求

●遺産分割の結果
法定相続分とは異なる割合で
相続財産を取得した方
●遺留分侵害額請求の請求を受けた方
●遺留分侵害額の請求をした方

は、実際に取得した相続財産で相続税額を計算すると
当初申告の相続税額が異なっていることが多いと思われます。

当初申告の相続税が過大であった方は
更正の請求を行い
これが認められば
還付を受けることができます
(相続税法32条)。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
配偶者に対する相続税額の軽減措置
のいずれも
相続税の申告期限までに分割されている財産に限って適用されるので

現実的には
当初申告では上記軽減措置がないものとして申告し
遺産分割後に更正の請求を行って
軽減措置の適用を受けることになります。

事後的に軽減措置の適用を受けるためには
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
① 当初申告時
 「申告期限後3年以内に分割見込書」の提出
② 申告期限3年経過後2か月以内
 「遺産が未分割であることについて
  やむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出
③ 上記②の承認
④ 遺産分割確定後4か月以内
  更正の請求
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
をしなければなりません。 

税務署が上記②を③として認めるには
事実上
申告期限から3年経過した時点で
遺産分割の裁判中であることが必要です。

実際に遺産分割を依頼した弁護士が
遺産分割の調停を申し立てたのが
申告期限から3年経過後であったことから
上記③の承認が得られず
その結果
小規模宅地の特例の適用ができなかった
という事例が発生しています。

【平成26年6月2日裁決】
https://www.kfs.go.jp/service/JP/95/16/index.html

相続税の申告は税理士に依頼し
遺産分割は弁護士に依頼することが多いと思いますが
両者の連携がとれていないと
相続税の還付を受けられない
という事態が発生してしまうのです。

相続問題を本当に解決するためには
相続税法への目配せが不可欠であることを理解して
事件処理に臨んでおります。

相続開始前

遺言書の作成

すべての方が遺言書を準備する必要があるとは考えていません。
実際、遺言書の作成をサポートする弁護士などもその大半は
ご自身の遺言書は作成していないと思います。

では、遺言書を準備した方が良い場合とはどのような場合でしょうか。

私の経験上、遺言書の準備をお勧めするのは以下の方々です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 お子さんのいないご夫婦
2 再婚して前の配偶者との間にお子さんがいる方
3 婚外子のいる方
4 養子のいる方
5 相続財産のほとんどが居住用不動産の方
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お子さんがいないご夫婦の場合

どちらかがなくなった場合
相続人は、
 残された配偶者
 亡くなった方の親または兄弟
となります(民法889条)。

亡くなった方の親が存命していることは
不測の事態でもない限り、可能性は少ないので
現実的には、配偶者とと亡くなった方の兄弟又はその子(姪や甥)
相続人になるケースが大半です。

この場合、法定相続分は
 3/4 配偶者 
 1/4 亡くなった方の兄弟又は姪・甥
ですが(民法900条3号)
問題は、法定相続分の多寡ではありません。

遺言書がないと遺産分割協議をしなければならないのですが
配偶者と亡くなった方の兄弟は関係が希薄なので
配偶者に遠慮することなく自分の権利を主張することが多く
遺産分割協議がまとまらないのです。

このような場合こそ
遺言書の出番です。

兄弟には遺留分がないので(民法1042条1項)
すべての相続財産を配偶者に相続させる
という遺言書を作成しておけば
遺された配偶者の方が
兄弟や甥姪に遺留分侵害額請求をされる心配がなくなるからです。

また、配偶者は相続財産1億6千万円までは相続税がかからないので(相続税法19条の2第1項2号イ)
多くの場合、相続税も心配する必要がありません。

 

再婚して前の配偶者との間にお子さんがいる方

婚外子のいる方

養子のいる方

このような家族構成の場合
まともに遺産分割協議ができそうもないことは
容易に予想できると思います。

兄弟の場合と異なり、彼らには遺留分があるので
上記1でご案内したケースとは異なり
遺言書があっても、相続後の紛争は避けられませんが
遺言書を作成しておくことによって
遺された配偶者の方などの経済的負担を少なくすることができます。

相続財産のほとんどが居住用不動産の方》

2019年7月以降に亡くなった方の相続から
遺留分の取扱いが変わりました。

それまでは、
遺留分を請求された義務者は
お金で払うことも、現物の財産で払うこともできたのですが

民法改正後は
遺留分を請求された義務者は
お金で払うこととが原則となり
現物の財産で払う場合には
譲渡所得が課されることになりました
(詳細は、2021年1月14日の下記コラムを参照ください)。
https://wada-lawcpatax.com/遺留分侵害額請求における課税リスク/

そうすると、相続財産のほとんどが居住用不動産の方が
遺産分割協議をしようにも
居住用不動産を共有にするという選択肢はない以上
結局、居住用不動産を売却してお金をねん出することになりかねない
ということになります。

加えて、実際に売却したわけではないのに
税務上は売却したものと扱われるので
税金も納めなければならない
というダブルパンチになりまねません。

もちろん、遺言書を作ったとしても
遺留分を請求されるリスクがあるので
遺言書が全てを解決する手段にはなりません。

ですが
 ■法定相続分 > 遺留分
なので、遺言書は経済的負担を減らすことに役立ちます。