書いてある文言をないものとして扱う条文とは

はじめに

条文に書いてある文言を
解釈上なかったものとして扱うなんて
文理解釈上あり得ないことですが
税法にはそのように取り扱わざるを得ない条文があります。

法人税法31条と所得税法49条です。

法人税法31条と所得税法49条は
減価償却資産の償却費を規定しており
その主語は以下のとおりです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
法人税法第31条
…各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき
その償却費として…損金の額に算入する金額は

所得税法第49条
…その年12月31日において有する減価償却資産につき
その償却費として…必要経費に算入する金額は
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2つの条文を文面どおりに解釈すると
償却費として損金の額できる又は必要経費に算入できるのは
減価償却資産のうち

「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」
 又は
「その年12月31日において有する減価償却資産」
のみであり、

期中又は年の途中において、除却・売却を行った結果
当「事業年度終了の時において有」していない
又は「その年12月31日において有」していない
「減価償却資産」については

その「償却費」を事業年度又は暦年の
損金の額又は必要経費に算入することはできない
ということになりそうです。

所得税法は

しかし、所得税法基本通達49-54は
「年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の計算」
として、以下のように定めています。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/13.htm#a-03

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
年の中途において、
一の減価償却資産について譲渡があった場合における
その年の当該減価償却資産の償却費の額については、…、
その年分の…所得の金額の計算上
必要経費に算入しても差し支えないものとする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり
「その年12月31日において有」していない
「減価償却資産」であっても
「年の中途において、…譲渡があった場合」
譲渡した減価償却資産に係る「償却費」を
「必要経費に算入しても差し支えない」
つまり必要経費に算入することを認めているのです。

法人税は

これに対し、法人税法には所得税法基本通達49-54
に相当する通達はありません。

そうすると、法人が「事業年度の中途で
譲渡した減価償却資産」については
「償却費」は損金の額に算入できないのでしょうか。

譲渡で考えてみると
期中の償却費を計上した後の
帳簿価額と売却額の差額を
売却損益として計上した場合と

期中の償却費を計上せずに
期首の帳簿価額と売却額の差額を
売却損益として計上した場合では

売却損益の金額が異なりますが
それは償却費の額と同額であり
最終損益に与える影響額は同じなので

どっちの処理によったしても
損益の額は変わりません。

したがって、
損金の額に算入できる償却費の対象を
「…各事業年度終了の時において有する減価償却資産」
に限定する実質的な意義はないことになります。

だからこそ、所得税法基本通達49-54は
「年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費」
を必要経費への算入を認めているんだと思います。

なお、令和3年版逐条解説638頁には
事業税の計算に影響する旨の記載があります。

もともとは

31条「各事業年度終了の時において有する」と
と49条の「その年12月31日において有する」
という文言は
いずれもないものとして無視して条文を読むのが得策です。

もともと、私が担当した審査請求事件で
減価償却資産の償却開始日が問題となった事案があり
その事案では、法人税法施行令第13条が規定する
「事業の用に供し」の法律解釈とその事実認定が
問題となりました。

直接の解釈対象は法人税法施行令第13条ですが
「法律」の解釈である以上
法人税法2条23号と31条の解釈が起点となります。

しかし
31条の解釈にあたり
「各事業年度終了の時において有する」の意義が
どうしても理解できず
いろいろな文献に当たってみたのですが

国税庁主税局が毎年出す平成13年版の税制解説本に
組織再編税制の新設に伴って追加された旨の記載が見つかっただけでした。

組織再編を経験する法人は圧倒的に少ないのに
組織再編税制に必要という理由で

読まない文言を追加するなんて
地頭の良いキャリアの方が考えていることは
良くわかりません。

以上