再調査の請求を経るべきか

国税通則法の改正により
  処分→再調査の請求→審査請求
  処分→審査請求
という、いずれのルートを辿るかを
納税者が選択することができるようになりました。

国税審判官だった立場からいうと
再調査決定書を読めば事案を早く理解できるので
再調査の請求を経由していただく方がありがたいです。

しかし、納税者の立場からすると必ずしもそうではないのではないか、
というのが私の意見です。

では、納税者は、どのような場合に
直接審査請求をした方が良いのでしょうか。

あくまでも私個人の意見ですが
税務調査が粗く、証拠が十分でない事案は
審査請求をした方が良いのではないか
と考えています。

このように考えるようになったのには
私が担当審判官となったある事案がきっかけでした。

その事件は再調査の請求を経由した事案だったので
答弁書が提出される前に処分通知書と再調査決定書を
読み比べることができました。

通常は処分通知書と再調査決定書に記載されている理由は
大体おなじことが多いのですが
その事案では両者の理由の記載が異なっていました。
再調査決定書には処分通知書にはない記載が多数あったのです。
そして、その後に提出された答弁書は再調査決定書を引用していたので
答弁書の記載と処分通知書の記載も異なっていたことになります。

不思議に思いながら原処分庁に赴き、調査資料にあたったところ
漸く理由がわかりました。

処分段階では原処分の根拠となる証拠を集めていなかったので
再調査の段階で証拠を集めた証拠に基づいて
再調査決定書を作成していたからでした。
つまり、原処分段階の調査不足を再調査請求の調査で補完していたのです。

再調査の請求における追加調査を禁じる規定はないので
補完調査を行うこと自体、違法ではありません。
しかし、再調査の請求も審査請求と同様に
不服審査という納税者の権利救済のための手続であることからすると、
再調査の請求を補完調査に利用することの違和感を強く感じました。

逆に納税者の立場からすると
原処分庁に補完調査をさせるべきではない、
そうであれば、再調査の請求を経由しない
という選択肢もあって良いのでは、
と考えるようになりました。

もっとも、審査請求においては、
審判所が当事者が提出した証拠だけでは判断できない場合には
審判所自ら調査することが必要となるので
原処分時の証拠が不足しているからといって、
直ちに取消しということにはなりません。

しかし、
調査不足を原処分庁にカバーさせる機会を与えないという意味で
直接審査請求をすることを検討しても良いのではないでしょうか。

実は、この事案では再調査それ自体にも問題があり
そのことも、こうした考えに至った理由のひとつなのですが
そこまで言及してしまうと
守秘義務に抵触してしまうので
コラムでは割愛いたしました。

以上


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