自宅待機を命じられたときの給与
コロナを理由にテレワークではなく
休業を命じれらた場合
その間の給料はどうなるのでしょうか?
この点に関し
労働基準法と民法が規定しています。
労働基準法の定め
労働基準法第26条は
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合
使用者に対し
業期間中の休業手当として
平均賃金の100分の60以上
の支払いを義務付けています。
そのため
休業手当が不支給の場合
労働基準法120条第1号により
30万円以下の罰金が課されます。
ちなみに
休業手当は
労働基準法114条が規定する
付加金の対象なので
訴訟で支払いを求めた場合には
付加金の請求も忘れないようにしましょう。
使用者の責に帰すべき事由
厚生労働省は
「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」において
「使用者の責に帰すべき事由」」に当たらない場合として
不可抗力による休業の場合を挙げており
不可抗力による休業と言えるためには
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者として
最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない
事故であること
という2つの要件を
両方とも満たすものでなければならないとしています。
そして、
②の具体的な努力を尽くしたと言えるか否かの例として
・自宅勤務などの方法により
労働者を業務に従事させることが可能な場合において
これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる
業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断するとしています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-7
Q5において、不可効力による休業の場合の考慮要素として
海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け
事業を休止したことに伴う事業の休止である場合の考慮要素として
当該取引先への依存の程度
他の代替手段の可能性
事業休止からの期間
使用者としての休業回避のための具体的努力等
を総合的に勘案し、判断する必要があるとしており、
最後の要素以外は上記①の要件の検討要素であることを考慮すると
不可効力による休業といえる場合はかなり限られ
使用者は、多くの場合、休業手当の支給は不可欠といえるでしょう。
なお
経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して
事業主が支払った休業手当の額に応じて
雇用調整助成金が支給されます。
民法の定め
債権者の責めに帰すべき事由によって
債務を履行することができなくなったときは
債権者は、反対給付の履行を拒むことができない
(536条2項前段)
債権者・債務者というワードがわかりにくいので補足すると
債権者=使用者 ∵ 労働を請求できる
債務者=労働者 ∵ 労働の提供が主たる義務
です。
また、
債権者は、反対給付の履行を拒むことができない
の部分は
法改正される前は
債権者は、反対給付の履行を拒むことができない
とされており
改正前の方がわかりやすいですね
改正を担当した法務省の職員の本229頁によれば
文言がかわっても
従前と解釈は変わらないので
新法によっても
報酬債権の支払いを求めることができる
という趣旨の説明がされています。
つまり、536条2項によれば
休業が「債権者の責めに帰すべき事由」による場合
労働者は使用者に給料全額を請求できる
とされているのです。
使用者の責(め)に帰すべき事由 の違い
使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合
労働基準法も
民法も
給与の支払いを請求できるとしていますが
請求できる金額が異なるため
使用者の責(め)に帰すべき事由
の意味が問題となります。
この点に関し
最高裁昭和62年7月17日判決は
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「労働基準法第26条」の
「『使用者の責に帰すべき事由』とは
取引における一般原則たる過失責任主義とは
異なる観点をも踏まえた概念というべきであって
民法536条2項の
『債権者ノ責ニ帰スヘキ事由』よりも広く
使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む」
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としました。
これによれば
民法を根拠として
給与の全額請求が認められるためには
使用者に故意又は過失があったことが必要なるので
労基法を根拠とする6割請求の方が
使用者の責めに帰すべき範囲が広い
ということになります。
とはいえ
不況を理由とする生産調整のための待機命令の場合
休業の回避が不可避であったと
認められるケースは多くはないと思われますので
全額請求が可能なケースが多いでしょう。
以上