自己株式買取りの税務リスク(みなし配当)
みなし配当
経営者が保有する株式を
自身が経営する会社に
買い取ってもらった場合
買取価格がいくらか
によって
以下のような税務リスクがあります。
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高額買取りの場合
当事者 経営者(売主) みなし配当(所得税法25条1項5号)
会社(買主) みなし配当に係る源泉徴収義務
低額買取りの場合
当事者 経営者(売主) みなし譲渡(所得税法59条)
以外 個人株主 みなし贈与(相続税法7条・9条)
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買い取る会社の仕訳は
(借)自己株式(貸)現金預金
にすぎないのに
税務上みなし配当とされることについて
税理士の方にとっては当然の知識であるのに対し
弁護士の多くはよくわからない
というのが実態だと思います。
経済的にみれば
剰余金の配当
自己株式の買取り
はいずれも
会社→株主に対する払い戻し
ですから
適正価格を超えた自己株式の買取りは
配当と同じ経済的効果を生む
からです。
東京地裁令和3年11月11日判決
前置きが長くなったのは
みなし配当に関する知識が
この裁判例を理解する前提となるからです。
税理士に対する損害賠償責任が認められた
裁判例として、判決が
T&Aマスター925号で紹介されています
(速報は918号)。
記事によると
原告は個人たる経営者のみのようですが
買主の会社も
加算税については
不法行為請求ができたのではないか
と思います。
というのも
みなし配当では
上記のとおり
会社に源泉徴収義務が発生します。
本件でも
会社に対し
納税告知処分 約3千万円の源泉税等
賦課決定処分 約3百万円の加算税
が課され
会社は審査請求したものの
平成29年8月2日付で棄却されています
(TAINS F0-1-821)。
加算税部分は
会社負担となるので
過失によって生じた損害
と評価しうるのではなないでしょうか。
参考書籍
みなし配当については
これだけで1冊の本が複数あるほど
難解な分野なので
ご興味がある方は
組織再編・資本等取引を巡る税務の基礎
みなし配当の税務
などをご参照ください。
以上