自己紹介(1)なぜ会計士・弁護士になったのか

名刺交換をすると、弁護士と公認会計士という
2つの資格があることに珍しがられます。
その後に、どうして会計士と弁護士を目指したのですか
と聞かれることもあります。

短時間の会話の中でキチンとお伝えするのが難しいので
私自身のことを知って頂く意味で
これまでの経歴について、触れたいと思います。

 なぜ会計士になったのか

私が通っていた高校はいわゆる進学校ではなく、
また、その高校は幼稚園から大学まで併設する学校だったので、
大学受験という雰囲気はとても希薄でした。

中学からやっていた部活を辞めて時間を持て余していた私でしたが、
高校2年生ともなると漠然と将来のことを考えるようになりました。

地頭が良いわけでも、特別な才能もないことを自覚していたので、
他のひとと差別化を図るためには、何か手に職をつける必要があると考え、
それには資格を取得すれば良いのではないかと考えるに至りました
(考えが浅いですね)。

学校の図書室に「なるにはBooks」という職業案内本のシリーズがあり、
目ぼしい職業の本を読みながら、いろいろと考えました。

理数系は苦手だから医者や建築士は除外、
司法試験に受かる頭はないから弁護士はありえないなど、
消去法で考えていったところ、
残った中で面白そうだった職業が公認会計士でした。

 ・経理に関わる仕事ではあるが税理士とは異なる職種であること、
 ・難関資格の一つであること、
 ・個人ではなく監査法人という会社形態で運営している
など、魅力的な要素がたくさんありましたが、

何より、凄い資格という評価されながら
世間に余り知られていないというマイナー感というか
知るひとぞ知るといった感じが気に入り、
漠然と公認会計士になることを考えるようになりました。

会計士を受験する大学生の多くは、大学に通いながら
受験専門学校の通うというダブルスクール生だったので、
大学は合格にそれほど大きな要素ではないことを後から知るのですが、

当時はインターネットなどなかったので、
会計士になるためには大学に行く必要があると考え、
会計学科や会計学専攻のコースを置く大学のパンフレットを取り寄せ、
どの大学を目指すかを検討しはじめました。

このように、高校生のときに会計士を志し、
会計士を多く輩出しているという観点から大学と学部を選ぶなど、
会計士に対する思い入れは強かったので、
1991年の試験で合格したときはとても嬉しかったです。

 なぜ司法試験を受験したのか

私が司法試験を受験するために法科大学院に進学したのは
37歳(2006年)のときでした。

1999年まで監査法人トーマツ(今の有限責任監査法人トーマツ)
で監査業務に従事した後、
税理士事務所とPwCでの株式評価業務を経て、
2001年から新日本監査法人(今のEY新日本有限責任監査法人)の
コンサル部門で内部監査業務に従事することになりました。

内部監査という業務監査は、決算書が監査対象となる会計監査と異なり、
会社の業務そのものが監査対象となるので、
会計監査で得た知識や経験では太刀打ちできないことを痛感することとなりました。

かいつまんでいうと、
会計は、過去の事実をルールに則って数値で表現するためのツールなので
(2000年の金融ビッグバン以前のはなしです。今の将来予測のウェイトが非常に大きいです。)、会計監査では、過去の事実そのものが正しいかどうかは問題になりません。
過去の事実が決算書に反映しているかどうかが問題になるからです。

これに対し、
業務監査では過去の事実が適正だったかどうかだけでなく、
将来にかかわる意思決定が適正か否かまでもその監査対象となるので、
経営に関する洞察や法律に関する知識が必要となるのですが、
そうした知識や経験は会計監査では得られません。

そこで、ビジネスや法律に関する知識を補完するため、
社会人向けの大学院に通うことを決め、
2003年に大学院に入学し、2005年に経営学修士を取得しました。

当初は、2005年からも同じように社会人向けの大学院に通って、
ビジネスに関わる法律知識を習得しようと考えていたのですが、
実際に社会人向け大学院に通うようになって、考えが変わりました。

法律知識が必要であることに疑いはなかったのですが、
働きながら大学院に通うというスタイルで、
果たして満足できる知識が習得できるのか、疑問があったからです。

私が通っていた大学院は平日夜間と土曜日に授業がある学校でしたが、
先生側も生徒に過剰な負荷がかからないように配慮があったせいか、
勉強漬けの環境とは言い難いものでした。

そのせいか、あの程度の勉強量で経営学修士と名乗ることに
後ろめたさにようなものを感じましたし、
何より、院に通った当初の目的が達成できたとはいえない状態でした。

私が会計士を受験したときは商法が唯一の法律科目だったのですが、
法的思考に馴染めず、克服するのに非常に苦労したことを考えると、
働きながら大学院に通うというスタイルでは、
法律知識を満足できるレベルに引き上げることはできないと思いました。

当時は、業務監査の一環としてコンプライアンス業務を行うために
法律を学ぼうとしていたので、想定していた主な顧客は会社です。
想定顧客が会社である以上、商法の知識は必須であり、
2006年から会社法という新たな法律の施行が予定されているのであれば
引き続き、コンプライアンス業務に関わるために
会社法の知識も必須といえます。

法的思考が苦手な私が、働きながら大学院に通うという勉強スタイルで、
1000条近いボリュームがある会社法について
条文を使いこなすレベルまでに達するには、
圧倒的に時間が足りないことは明らかでした。

条文を自分の血肉になるくらいまでにするには、
ある程度時間をかけて、何回も何回も、
条文を引くしかないと思っていたので、
勉強時間の絶対量を確保するため
仕事を辞めて、法科大学院に通うことにしました。

会社法だけが法科大学院に通うことにした理由ではありません。
選択科目の中に独占禁止法という、
コンプライアンス業務に不可欠な科目があることも大きかったです。

会計士だったら租税法を選択するのではと聞かれることも多いですが、
当時は業務監査に従事することを考えていたことと、
税法は専門家である税理士に聞けば良いと考えていたので
租税法を選択することは考えませんでした。

現在携わっている業務のことを考えると、
租税法を選択しておけば良かったといえるかもしれません。

このように、会社法やビジネスに関わる法律を勉強することが
法科大学院に入学した主目的だったので、
弁護士になることはあまり考えていませんでした。

司法試験に合格すれば、わざわざ大学院で法律を学びましたと
説明する必要もなくなるので、司法試験受験までは予定していたものの、
弁護士になるには一定期間司法修習をしなければなりません。

司法修習は裁判に関わる人材を育成する場なので、
ビジネスに関わることを志向していた私には
司法修習の時間が有益な時間とは思えませんでした。

また、合格したのが41歳(2010年)という本厄の年齢だったので、
余計なことに時間を使いたくないという思いがありました。

このような経緯で司法試験を受験したので
司法試験に合格したときは、
会計士試験合格時とは大きく異なり、
ホッとしたというのが実感でした。

(第2回に続く)