議決の方向性を決める時期は早い

1 心証形成時期は早い

紛争を審理する場合において
審理の早い段階で判断者の心証は出来てしまっている。
国税審判官という判断する立場を経験してわかったことです。

これは、裁判官出身の弁護士が
「裁判官から見た、効果的な主張書面の書き方とは」
というコラムでも同じことを仰っています。
https://www.kottolaw.com/column/201029.html

また、弁護士会主催の研修で
別の裁判官が同趣旨の発言をしていたことも耳にしたことがあります。

2 審査請求の特殊性(1)代理人の属性

審査請求の場合、訴訟と異なり、
代理人がつく割合が約半数であり
代理人の大半は税理士の方なので
税法の解釈という観点から
審査請求書を記載しているケースは非常に少ないです。

というのも
税理士の先生方は通達が正しいものという前提で実務をしているせいか
審査請求書だけでは
何条のどの要件の解釈の問題なのか
法律上問題の所在が不明な場合が多いのです。

そのため、原処分庁側の更正通知、答弁書、再調査決定書が提出されて
ようやく事案の概略や法律上の問題の所在が分かることが多いです。

上記のような事情があるため、
国税審判官が心証形成する時期は
審査請求書を受領した後
原処分庁から答弁書、再調査決定書が提出されてから
というイメージでしょうか。

3 審査請求の特殊性(2)職権探知主義

訴訟の場合
当事者から提出される証拠や主張が足りなければ
原告敗訴の判決をすれば良いのに対し

審査請求の場合
結論を出すのに証拠が足りなければ
審判所自ら集めなければなりません。

しかも、
 ①審査請求を受けてから1年以内に裁決をするという行政目標がある(通則法77条の2参照)
 ②裁決は審判所という組織の判断なので
  審判官が行う議決→裁決までの検討過程の時間が必要である
 ③取り消す議決の場合には慎重な審査プロセスがある
 ④他方、当事者の主張のポイントがずれている場合には
  不意打ちと言われないようにするため釈明を求める必要がある
ので、
証拠が足りない場合や釈明に対する回答期間を考慮すると

担当審判官は、早い段階で結論を決めて
 担当審判官→合議体→支部
という組織としての結論の方向性を早期に決めなければならない
という組織ならではの要請があります。

4 最後に 

 私は、審査請求書を受理した段階から議決書案を書き始めていたので 
 上記でご照会したコラムで裁判官出身の弁護士の方が
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 「主張書面は、主張を認めてもらうために裁判官を説得する書面です。
  そのためには、正しいと思う主張を裁判官にぶつけるだけではなく、
  安心して判決が書ける材料を提供しなくてはなりません。」
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 という記述には腹に落ちるものがありました。

 今は、当事者の代理人として、判断してもらう立場なので
 「安心して判決が書ける材料」と思ってもらえるような
 書面と証拠を早い時期に提出することを心掛けるようにしています。
 
 以上

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