財産分与の課税リスクに対処するには

現物財産を交付をした場合

財産分与としてマイホームを渡した場合
税務上は、譲渡と扱われるので
譲渡所得が課税される可能性があることは
以前のコラムでご案内したとおりです。

【参考】所得税法基本通達33-1-4

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm

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33-1の4《財産分与による資産の移転》 
 民法第768条《財産分与》の規定による
 財産の分与として資産の移転があった場合には
 その分与をした者はその分与をした時において
 その時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
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もっとも、マイホームを売った場合
譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる
という特例が用意されているので(租税特別措置法第35条)

離婚に伴う財産分与でマイホームを渡すことになった場合
この特例が使えるように配慮する必要があります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

弁護士として注意すべき場合

弁護士として注意すべき場合は、
別居している夫婦が協議離婚する場合です。

というのも、
特措法35条2項は
  1号で当事者を
  2号で期間を
それぞれ制限しているからです。

当事者の限定(1号)

売手と買手が夫婦ではないことが必要です。 

「当該個人の配偶者その他の当該個人と
政令で定める特別の関係がある者に対してするもの
・・・を除く。」
とされているからです。

期間制限(2号)

以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、
住まなくなった日から3年を経過する日の属する
年の12月31日までに売ることが必要です。

「居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなったもの
とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは
当該土地の上に存する権利の譲渡を、
これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなった日から
同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした場合」
とされているからです。

協議離婚は、
裁判の確定によって離婚が成立する裁判離婚と異なり
離婚届の提出によってはじめて離婚が成立します。

離婚合意書を公正証書などで作成する場合
離婚と財産分与としてマイホームを渡すことの合意を
同時に行ってしまうと
夫婦間でマイホームを譲渡したことになるので
1号の要件を満たさなくなってしまうのです。

また、マイホームの所有者が別居のために出て行った後に離婚した場合、
住まなくなった日から4年以上が経過してしまうと
2号の要件を満たさなくなってしまうからです。

税理士の方に相談するに当たり

譲渡所得の計算には
所得から控除する譲渡費用として
マイホームの取得価額がいくらかが必要となりますので
税理士の方に相談する際は
具体的な計算ができるだけの資料を取りそろえてからするようにしましょう。

以上