更正をすべき理由が認められない処分の審査請求の範囲
《期間制限》
税務署長が行う更正や決定には期間制限があり、
原則として、申告期限から5年が経過するとできなくなります
(国税通則法70条参照)。
同様に、納税者が行う更正の請求にも期間制限があり
原則として、申告期限から5年が経過すると
できなくなります(国税通則法23条1項本文参照)。
もっとも、納税者が行う更正の請求の期間制限が外れる例外があり
その例外の一つが、
申告していた時に計算の基礎としていた事実が
裁判で争われた結果、申告していた時の事実と異なることが
確定した場合です(国税通則法23条2項参照)。
典型的な例が、騙されて契約したものの
詐欺の主張が認められ、裁判で契約が取り消されたような場合です。
《5年を経過した年分の申告について更正の請求がされた場合において
更正の請求の対象外事項に係る更正の可否》
では、5年が経過してしまった申告について
納税者が期間制限に係らない更正の請求をして
これが認められる場合において
税務署長は更正の請求の対象ではなかった
事由について更正し、結果として
更正の請求を一部認めるという処分ができるのでしょうか。
私は、
①税務署長が更正や決定をする場合において、
納税者が不正の行為により税額を免れた場合に
申告期限から7年を経過するまでは
更正や決定ができる旨の規定がありますが(国税通則法70条2項)
納税者側の国税通則法23条2項のような
期間制限に係らない例外を定めた規定が見当たらないこと
②更正の請求が認められない処分に対する
審査請求の範囲は更正の請求の対象に限るとするべきであり
審査請求の対象となった年分の申告全部ではないと考えられること
③申告していた時に計算の基礎としていた事実が
裁判で争われた結果、申告していた時の事実と異なることが
確定した場合に限って期間制限が外れるのであって
逆にいえば、裁判で争われた結果、申告していた時の事実と
変わらない事実については
期間制限の対象となると考えられること
から、認められないと考えました。
《審判所の取扱いは》
しかし、審判所の考え方は違いました。
事案の詳細な説明は割愛しますが
過去の申告において、
契約に基づき権利が確定したとして
雑所得の収入金額としていた金額について
契約を取り消した裁判が確定したので
未入金の部分について更正の請求を認めるべき場合において
審査の過程で
既に現金で収受していたにもかかわらず
計上が漏れていた金額があることが判明しました。
私は、計上が漏れていた部分は更正の期限が徒過しており
考慮することができないので、
全部取消しとすべきと主張しましたが
審判所では、特段の理由説明もなく、
計上が漏れていた金額を考慮して、結果として、一部取消しとなりました。
《どのように考えるべきか》
税務署長が更正や決定をする場合には期間制限があるにもかかわらず、
期間制限を徒過した年分の申告について更正の請求がなされた場合に
請求の対象外の部分についても
更正や決定ができるという取り扱うのは
単純に考えても便乗じゃないかと思いますし
訴訟に置き換えて考えてみても
訴訟物の範囲を超えているのではないか
と思うのです。
いずれ実際の事案で争って決着をつけたい事項のひとつです。
以上