未支給の社会保障給付は相続財産か
国民年金の場合
国民年金の支給日は2か月に1度ですが
支給日を迎える前に受給権者が亡くなった場合
未支給の年金受給権は相続財産として取り扱う必要があるでしょうか。
直感的には
被相続人に帰属する財産に当たるとして
相続財産として取り扱うことが正しいように思えます。
しかし
未支給年金の支払請求に関する訴訟中に亡くなったことから
相続人による訴訟承継の可否が問題となった事案の中で
最小三判平成7年11月7日民集 49巻9号2829頁は
以下の判断をして
相続財産にならないことを示しました。
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国民年金法19条1項は
「年金給付の受給権者が死亡した場合において
その死亡した者に支給すべき年金給付で
まだその者に支給しなかったものがあるときは
その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって
その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは
自己の名で
その未支給の年金の支給を請求することができる。」
と定め
同条5項は、
「未支給の年金を受けるべき者の順位は
第1項に規定する順序による。」と定めている。
右の規定は
相続とは別の立場から
一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり
死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が
同条の規定を離れて
別途相続の対象となるものでないことは明らかである。
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判例の射程
上記を前提とすると
国民年金法19条と同じ規定をする法律にも
射程が及ぶことになります。
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雇用保険法
(未支給の失業等給付)
第10条の3
失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において
その者に支給されるべき失業等給付で
まだ支給されていないものがあるときは
その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、
事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)
子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて
その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは
自己の名で
その未支給の失業等給付の支給を請求することができる。
厚生年金法
(未支給の保険給付)
第37条
保険給付の受給権者が死亡した場合において
その死亡した者に支給すべき保険給付で
まだその者に支給しなかつたものがあるときは
その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
又はこれらの者以外の3親等内の親族であって
その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは
自己の名で
その未支給の保険給付の支給を請求することができる。
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したがって
上記給付はいずれも相続財産に含まれないことになりますから
遺産分割の対象にもなりません。
また
みなし相続財産を規定する相続税法3条にも該当しないので
相続税の計算上、課税価格にも含めません。
以上