映画「宮松と山下」再鑑賞

予告編以上の情報のないまま見た前回と異なり
監督3人のインタビューや
パンフレットも読んで
臨んだ今回では

ストーリーを気にすることなく
見ることができたせいか
監督の意図をより感じることができたように思います。

妹の兄に対する思い

「宮松」の洗濯物を洗濯物を畳んでいた妹が
思わず洗濯物の臭いを嗅ぐシーンに
失踪前の妹と兄の会話が回想シーンが挿入されます。

湯船につかる妹が
夜遅くに帰り洗面所にいる兄に対し
明日の遅番までには洗っておくので
着ていた制服のシャツを
洗濯かごに入れておくように伝えます。

一日タクシー業務で着ていたシャツですから
妹は洗濯するためではなく
兄の臭いを感じるために
洗濯をダシに使ったのではないか。

そんなことを連想させる編集です。

記憶が戻ってから(ネタバレあり)

妹に言われたとおり
近所の煙草屋でホープを買い
灰皿がある路上で買ったばかり煙草を吸います。

カメラは「宮松」の表情を映しだすとともに
周囲の雑音は遮断されます。

記憶が呼び起こされたのです。

周囲の雑音が戻ると同時に
家に向かって走り出します。

「宮松」が「山下」に戻った瞬間です。

妹が外出先から戻ったとき
「山下」は縁側に座って
ホープを吸っていました。

吸い殻がたまった灰皿と
煙草を吸う後姿をみて
妹は兄の記憶が戻ったことを悟ります。

期待をもって
横に座って兄に話しかけたのに
「宮松」の口調で返す兄。
そんな兄に寂しそうな表情を見せる妹。

「宮松」の演技をする兄に対し
妹は聞きます。

「こっちに戻ってくるんでしょう?」
「こっち?」
「そう、こっち。」

その後
カメラはタクシーの運転席に座る
「宮松」を映します。

「山下」に戻ったと観客が思わされた瞬間
銃で撃たれ、カットの声がかかります。
そして、アパートでカップ焼きそばをつくる
シーンが映し出され
「山下」が自分の意思で
「宮松」を選んだことが知らされます。

山下さんが実家に戻ってこなかったのは
記憶が戻らずいずらかったからではないか、
という夫に対し
妹は、記憶が戻ったからこそ戻ってこなかった
告げて映画は終わります。

こっちに戻ってくるんでしょう?

一般的な会話であれば
京都から実家に戻ってくるんでしょう?
という意味ですが

この義理の妹の真意は
私のところに戻ってくるんでしょう?
という意味だと思います。

妹の夫に対するセリフ

「記憶が戻ったからこそ戻ってこなかった」

夫に対しては、文字通り
実家に戻ってこなかった
という意味なのに対し

自分に対しても
私のところには戻ってこなかった
という確認をしているように感じました。

義理の兄妹であれば
婚姻も可能なので
二人が恋愛関係にあったとしても
近親相姦ということにはなりません。

妹の兄への思いは
「宮松」を見つめる目
12年ぶりの再会を喜び兄に抱きつく行動
など随所で登場しますが

二人が恋愛関係にあったのかどころか
は描かれていません。

しかし
周囲の人間がそのことを
感じ取っていたことを示唆するシーンも
出てきます。

夫となる男性は
かつて「山下」と同じ会社でタクシー運転手をしており昔から、
「山下」の妹に対する思いに気づいていました。

記憶をなくした「宮松」が実家に戻ってきたとき
不自然なくらいに「お兄さん」と呼びかけていたのに
最後の妹との会話では「山下さん」と呼んだのは何故か。

元同僚の谷は、「宮松」の家探しを手伝っていたとき
いずれ実家にはいずらくなるよ、と伝えます。

京都から戻ってきた「宮松」を
最寄駅で迎えたとき
妹は抱きしめるのですが
このシーンは映画では2回映し出されます。

最初は新横浜駅で待ち合わせた谷と
車で最寄り駅に降り立ったとき。
このときは遠方のカメラなので
当事者の表情はわかりません。

2回目は
義理の弟が回想するとき。
このときは
妹、「宮松」、谷、義理の弟
の4人の顔がアップになります。

谷の顔から
妹の「山下」への思いを察していたことが
わかります。

シナリオで確認したい

見る度に発見がある映画だと思うので
シナリオで確認したいことが沢山あります。

期待して購入したパンフレットには
シナリオが掲載されていなかったので
セリフに隠された登場人物の思いを
文字情報として確認できません。

監督インタビューや映画評も
香川さん中心です。

妹の妻役の津田寛治さんのインタビューは
目にしましたが
妹役の中越典子さんのインタビューは見当たらず
どのような演出がされたのか
興味があるところです。

2022年12月号までの
月刊シナリオにも掲載されていないので

近いうちに掲載されることを期待します。

以上

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