映画 土を喰らう十二カ月

人生観だけでなく
死生観を考えさせる
静かな映画でした。

信州の四季

主人公の日々の食生活を描いているのですが
雪深い冬から夏まで
四季の風景が
旬の食材とともに
鮮やかに映し出されます。

料理の美味しそうなこと。

食器も魅力的で
食材を引き立てます。

料理と食器をみるだけでも
足を運ぶ価値があります。

主人公の意識の変化

心筋梗塞で倒れた主人公は
一命をとりとめます。

その体験は
主人公の人生観・死生観を
変えてしまいました。

倒れる前の主人公は
恋人に同棲を持ち掛けますが

東京に住むその恋人は
即答はしませんでした。

その後
その恋人が一緒に住む
と答えたのに対し
主人公はこれを拒否します。

倒れた主人公を発見したのは
その恋人ですから
主人公の命の恩人なのです。

その恋人が同棲に応じようとしたのは
主人公をひとりにはできない
という思いもあったからでしょうが

主人公はひとりでいたい
といってこれを拒みます。

映画ではその理由をはっきりとは描かないのですが
ふたりには年齢差がありましたから
主人公が死んだあとのことを考えたからかも知れません。

主人公は早くに妻を亡くしています。

それだけなく
近所に住んでいた妻の母を亡くし
その葬式を主宰したことで
義母の知らない面を知ることができたことも
影響しているのかもしれません。

恋人の衣装の変化

生死を彷徨ったことで
恋人とのずれが生じたことは
終盤の恋人の衣装に表れていました。

それまではアースカラーのナチュラルな
色合いの服をきて
黒縁眼鏡をかけていた恋人は

主人公に別れを告げに来たときは
 真っ赤なスーツ
 黒のレザーブーツ
 コンタクト
といういで立ちに変わっていました。

ラストの意味

主人公は
亡き妻の墓を作ることができず
遺灰を自宅に保管していました。

その恋人は
主人公が亡き妻のことが忘れらない象徴と思っていたのでしょう。

最後に主人公に質問します。

奥さんの遺灰はどうするの?

主人公は無言で答え
恋人は去ります。

映画では
遺灰を川に散骨するシーンが描かれるので
主人公はそのことを伝えれば
もしかしたら
恋人は主人公の許に戻ってきたかもしれないのに。

そのことの意味をずっと考えています。

以上

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