税理士の懲戒が争われた 東京地裁令和4年6月3日判決(2)
2022年8月27日と28日
租税訴訟学会が開催されました。
プログラムのひとつに
このコラムで2022年6月30日に紹介した
裁判例(税理士の懲戒が争われた
東京地裁令和4年6月3日判決)を
担当された弁護士の方が
この判決について説明しました。
税のしるべの記事には出てこなかった
事実関係が沢山あることがわかりましたので
今回のコラムで補足します。
事実関係
被相続人には戸籍がなかった
戸籍がないので
相続が開始した平成20年11月の時点で
法定相続人がいませんでした。
その後
3人の子が認知の訴えを起こし
長男 平成22年3月
次男 平成23年2月
三男 平成22年3月
にそれぞれ裁判が確定しました。
相続人間の紛争
次男と三男は
被相続人が経営していた会社と役員に対し
職務執行停止
職務代行者選任仮処分
の申立てを行ない
被相続人が経営していた会社の
代表取締役には次男が就任しました。
そのため
被相続人の会社に対する出資・貸付について
長男は調査できる状態ではありませんでした。
被相続人の財産把握
被相続人と次男は共有で
外国向けネズミ講の証券を持っており
相続開始、次男は単独名義に変更したため
長男も税理士もその金額を
把握できる状態ではありませんでした。
ちなみにこの証券はMRIです。
https://digital.asahi.com/articles/ASM5S2RGMM5SUHBI00B.html
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59820660Y2A400C2CE0000/
業法の違い
本件では
事実関係だけでなく
有償性を前提とする弁護士法と
有償性を前提としない税理士法
という違いも結論に影響したのではないでしょうか。
税理士法は
第2条《税理士の業務》
税理士は
他人の求めに応じ
租税(…に関し
次に掲げる事務を行うことを業とする。
弁護士法は
第72条《非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止》
弁護士…でない者は
報酬を得る目的で
訴訟事件、…その他一般の法律事件に関して
鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い
又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、…。
裁判では
報酬の有無は
委任の存否に影響しない
という判断がくだされた前提に
有償性を前提としていない税理士法の規定は
大きかったと思います。
故意があったいえるのか
相続税を計算するためには
相続税法11条の2が規定する
「相続税の課税価格」が計算できていることが前提ですから
「取得した財産の価額」
がわかっていないとどうしようもありません。
本件では
「取得した財産」がわかっていないですから
そ「の価額」もわかっていません。
他に「取得した財産」があるかもしれない
では相続税を計算できないのです。
相続税の計算誤り
という結果を生み出す原因の一端が
税理士にあったとしても
「故意に
真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき」
(税理士法45条1項)
の故意があったというのは
飛躍があるように思います。
以上