通知書に処分理由を記載するのは

平成23年に国税通則法の改正があるまでは、
青色申告書に係る更正をする場合などの一部の例外を除き、
税務署の処分通知書には処分の理由が記載されていませんでした
(所得税法第155条、法人税法第130条参照)。

その後の改正により、上記以外の場合であっても、
処分通知書に処分の理由が記載されるようになりました。
もっとも、その根拠は、国税通則法ではなく、行政手続法第14条です。

行政法には、処分理由を後から変更できるか、
という論点があります。
この点については、最高裁の判決があり、
それによれば、
 ①処分を受けた側の不服申し立ての便宜
 ②処分をする側の恣意抑制
という2つの理由があり、
この2つの目的を損なわない限り、理由の変更は許されるとしています。

そこで問題となるのが、
課税処分に処分理由の変更があったかどうかを否かを判断する場合、
変更前の理由は何に記載されていることになるのか、です。

普通に考えれば、処分内容を記載した通知書です。
なぜなら、国税通則法の改正によって、
全ての処分に理由を記載することになったのですから、
通知書に記載された理由を変更できるか否かが問題となるからです。

私が担当審判官となった事案において、
原処分庁(税務署長)側が提出した答弁書に記載されていた理由と、
処分通知書に記載されていた理由が異なっていたことがありました。

そこで、理由変更の可否を問題にしたところ、
当時の部長から、
処分通知書には理由が記載されていれば足りるので、
理由変更の可否は問題とならない。
原処分庁の主張はあくまでも答弁書に記載されな内容であって、
答弁書に記載されている理由を変更することが変更の可否の問題である、
という趣旨の発言がありました。

納得がいかなかった私は、
そうなると、極端に言うと、
処分通知書には虚偽の事実であっても
具体的に記載されていればよいことなってしまうのではないか、
と言ったところ、その通りとの回答でした。

この点については未だに納得していないので、
機会があれば、訴訟で争って、どっちが正しいのか、
裁判で決着をつけたいと思っています。

以上