2019年7月以降に開始した相続において、2020年4月以降に遺留分侵害額を請求した場合の取扱い(その2)
問題の所在
◆改正相続法の適用開始 2019年7月
◆改正債権法の適用開始 2020年4月
のように、適用開始時期が異なっていることから
◆相続開始 2019年7月以降=改正債権法施行前
◆遺留分侵害額請求 2020年4月以降
の場合
当該金銭債権の時効期間は
◆改正債権法の適用あり 5年
◆改正債権法の適用なし 10年
のどちらになるのか、という問題について、
5年ではないか
という私の考えを2021年1月21日のコラムで書きました。
上記に言及した文献
上記と同じ問題について解説している書籍を見つけたので
ご案内します。
「一問一問 新しい相続法」(2019年、商事法務)の
Q81(125ページ)の(注)に全く同じ問題提起がありました。
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「相続開始により客観的には遺留分の侵害の有無は確定するとしても、
相続開始前に法律行為に相当するものは何らされていないから、
相続開始の時点では遺留分侵害額請求権の
『原因である法律行為が…された』とはいえないものと考えられる。
したがって、・・・時効期間が5年になるものと考えられる。
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遅延損害金の利率は?
ちなみに、Q80(124ページ)において
遅延損害金の発生時期に関する記述があるのですが
法定利率については言及がありませんでした。
改正民法施行日後に行った
遺留分侵害額の請求によって金銭債権が発生している以上
「施行日前に債務が生じた場合」
(改正法附則17条1項)に当たらないのが明らかなので
検討するまでもなく、3%が適用されるといったところでしょうか。
《参考》附則
(時効に関する経過措置)
第十条 施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、
その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)
におけるその債権の消滅時効の援用については、
新法第百四十五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 施行日前に旧法第百四十七条に規定する時効の中断の事由又は
旧法第百五十八条から第百六十一条までに規定する
時効の停止の事由が生じた場合におけるこれらの事由の効力については、
なお従前の例による。
3 新法第百五十一条の規定は、
施行日前に権利についての協議を行う旨の合意が書面でされた場合
(その合意の内容を記録した電磁的記録
(新法第百五十一条第四項に規定する電磁的記録をいう。附則第三十三条第二項において同じ。)
によってされた場合を含む。)におけるその合意については、適用しない。
4 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、
なお従前の例による。
(債務不履行の責任等に関する経過措置)
第十七条 施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、
その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。附則第二十五条第一項において同じ。)
におけるその債務不履行の責任等については、
新法第四百十二条第二項、第四百十二条の二から第四百十三条の二まで、
第四百十五条、第四百十六条第二項、第四百十八条及び第四百二十二条の二の規定にかかわらず、
なお従前の例による。
2 新法第四百十七条の二(新法第七百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、
施行日前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、
適用しない。
3 施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、
新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 施行日前にされた旧法第四百二十条第一項に規定する損害賠償の額の予定に係る合意
及び旧法第四百二十一条に規定する金銭でないものを
損害の賠償に充てるべき旨の予定に係る合意については、なお従前の例による。
以上