納税告知処分の適法性(東京地裁令和2年9月1日判決)
ジュリスト1568(2022年3月)号の
租税判例研究の対象裁判例は
給与に対する源泉徴収義務なのか
ホステス等の報酬に対する源泉徴収義務なのか
が争われた事案でした。
条文で言えば
所得税法183条を根拠とするのか
204条6号を根拠とするのか
が争われており
具体的には
28条の給与所得なのか
27条の事業所得なのか
が争われました。
紛争の狙いは
記事だけを読んでいたときは
源泉徴収がされていなかった事案にすぎないのだから
給与として源泉徴収しようが
報酬して源泉徴収しようが
徴収額の相違はあれど
大きな違いはないのに
どうしてこんな大事(おおごと)になったのだろう
と思いながら読んでいました。
その後、裁判例を読んで
税務署側の本当の狙いは
源泉所得税ではなく消費税にあった
という考えに至りました。
というのも
ホステスへの支給額が事業所得であれば
消費税法上の課税仕入れとして仕入税額控除できるのに対し
給与所得であれば仕入税額控除が出来ないからです。
インボイス制度導入で大騒ぎになっていることからも
わかるように
仕入税額控除ができるか否かは
支払側にとっては
キャッシュフローに直結する大問題であり
税務署からすれば
納税額に大きな違いが出てしまうからです。
もっとも、裁判では消費税も争点になっていたものの
消費税に係る処分の訴訟は
先行する納税告知処分の取消訴訟に
後から追加するかたちで訴訟提起したので
訴訟期限経過を理由に訴え却下となってしまったため
裁判所は仕入税額控除の可否について判断していません。
ちなみに
ホステス側は
源泉徴収がなかったことを前提に
事業所得の確定申告をしているはずなので
納税告知処分が確定した後
ホステスの納税額のうち
源泉徴収相当額分はどのように調整するのか
税務署側が職権で更正(24条)したのか
その後の処理方法がどうなったのか
興味があるところです。
なお、裁決は平成30年1月24日裁決(公表)です。
以上