裁判例 相続後に実現した債務免除益に課税しないとした東京高裁令和6年1月25日判決

下記コラムで紹介した事件の
控訴審判決があり
東京高裁は課税処分を取り消す判決をしました。

T&Aマスターの
1018号(2024年3月11日号)に記事が
1019号(2024年3月18日号)に判決文
が掲載されていたので
ご紹介します。

高裁のロジックは

◆ 所得税法9条1項16号の趣旨
   同一の経済的価値に対する
 相続税(又は贈与税)と所得税の二重課税の排除
 (最三判平成22年7月6日)

◆ 相続税は
  相続財産を取得した利得者に対して
  担税力を見出して課税されるもの

→ 相続税法13条1項1号の趣旨
   相続財産の取得者が
  被相続人の債務を承継して負担する場合
  その負担分については
  担税力が減殺される 
 ∴ 相続財産からの控除を認める

→ 相続税法14条1項の趣旨
  被相続人から承継する債務が
 「確実と認められない場合」には
  担税力が減殺されることにならない
 ∴ 相続財産からの控除を認めない

       ↓

相続財産から控除されなかった相続債務は
相続開始後に免除を受けたからといって
これにより
債務者に新たな担税力が生じるものではない

債務免除に係る相続人の利益は

◆ 形式的には 債務免除を受けた時点で発生
  潜在的には 相続により取得していた

◆ 具体的な内容をみても
  相続財産から控除されなかった債務に
  相当する部分の経済的価値は
  実質的に同一

私見 

相続税法や所得税法の条文の文言からですと
地裁の結論にならざるを得ません。
そこで
高裁は、条文の立法趣旨から解きほぐし
経済的実質という観点から
結論を導きました。

その意味で
納税者に寄り添った判決だと思いますし
直感的にも、高裁の結論を支持したいのです。

国は上告受理申立てをするでしょうから
最高裁は高裁の判断を支持してほしいところですが
最高裁には
◆破産会社の更正の請求の可否

のときように
地裁で負けた納税者を勝たせた控訴審判決を覆し
かつ経済的利益の存続については
判断しなかった
という前例があるので
今後の動向に注目です。

以上