離婚に伴う財産分与に関する令和3年4月22日裁決

税のしるべ2022年06月13日号で
離婚に伴う財産分与は
所得税法33条1項に規定する
資産の譲渡に当たるか
が争われた非公開裁決が紹介されていました。

事実経過

昭和43年 婚姻
昭和54年 夫 土地取得
平成31年 離婚
     上記土地を財産分与
令和 2年  期限内申告
     4/17 修正申告 
        財産分与に係る分離課税の長期譲渡所得として
     4/27 更正の請求 
        財産分与は「資産の譲渡」に該当せず
6/25  更正をすべき理由がない通知処分

争点については最高裁判例がある

離婚に伴う財産分与は
所得税法33条1項に規定する
資産の譲渡に当たり

譲渡所得が課税されることは
最判昭和50年5月27日(民集29巻5号641頁)
で確定していますから

請求が認められないことは
わかった上で審査請求したものと思われます。

これを受けて
所得税法基本通達33-1-4は
以下のように規定しています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm

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33-1の4《財産分与による資産の移転》 
民法第768条《財産分与》
(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)
の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には
その分与をした者は
その分与をした時において
その時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
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税理士の関与は

当初申告を期限内に行っていることからすると
請求人の夫は毎年確定申告を行っていたのでしょう。

税理士が財産分与に関する
税務上の取扱いを知らなかったとは考えにくいので
申告後に財産分与を行ったことを知り
修正申告をしたのかもしれません。

しかし
現金を分与をした場合には
税金がかからないのに

現物を分与した場合には
税金がかかることは

直感的には理解しにくいので
納得がいかない夫が
審査請求した
というのが実際のところなのではないでしょうか。

弁護士の関与は

離婚にあたり
夫側に弁護士がついていたかはわかりません。

弁護士がついていて
財産分与の課税リスクを考慮しないまま
離婚協議を進めてしまった場合には
弁護過誤となる可能性があります。

最判平成1年9月14日(集民157号555頁)は

夫名義の持家を妻に財産分与したことにより
夫側に多額の税金がかかることが
動機の錯誤に当たるとして
登記の抹消請求が認められた事案です。

上記最高裁の事案では
 所得税がかかるなんで思っていなかった
 わかっていたら持ち家ではない財産を分与していた
という夫側の主張が認められたからです。

ちなみに
登記の抹消請求の事案であり
所得税が争われた事案ではないので
更正の請求や弁護士に対する賠償請求
が認められたかは明らかではありません。

離婚協議や遺産分割協議など
財産の帰趨や登記が必要となる合意については
合意する前に
税理士や司法書士にレビューしてもらうことが
不可欠でしょう。

以上