4,630万円の課税を考える
誤送金の4,630万円の
民事・刑事の取扱いについて
弁護士間のTwitterでも議論が真っ盛りですね。
私は税務を取り扱う弁護士なので
このコラムでは
4,630万円の課税上の取扱いについて
考えたいと思います。
まず、民法703条又は704条に基づき
不当利得返還義務を負うことは間違いありません。
では、裁判によって
不当利得返還義務が確定したものの
返金が実現していない場合
誤送金のお金は課税所得となるのでしょうか。
課税所得になるのか
法曹の立場からすると
税法が
権利義務確定主義を標榜するのであれば
ご送金の返還義務が確定した場合には
収入金額から除外すべきではないか
したがって
課税所得を構成しないと考えるのが自然でしょう。
しかし
所得税法の立場からは
課税所得を構成し
最高裁もこれを肯定しています。
所得税法との考え方(民法との違い)
所得税法は
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所得税法36条《収入金額》
「収入金額とすべき金額」
↓
基本通達36-1
「法第36条第1項に規定する
「収入金額とすべき金額」
又は「総収入金額に算入すべき金額」は
その収入の基因となった行為が
適法であるかどうかを問わない。」
==========
これに加えて
所得税法は
更正の請求について
国税通則法の特例として
以下を規定します。
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所得税法152条
《・・・更正の請求の特例》
↓
所得税法施行令第274条
《更正の請求の特例の対象となる事実》
法第152条(・・・)に規定する政令で定める事実は
次に掲げる事実とする。
一 ・・・無効な行為により生じた経済的成果が
その行為の無効であることに基因して失われたこと。
==========
違法な収入であっても
法的な評価を離れて
純資産の増加をもたらす
経済的効果に着目して
収入金額に含める以上
収入金額から除外するためには
純資産の増加をもたらした事実が
現実に消滅したことが必要となるからです。
施行令の「経済的成果が・・・失われた」
とはこのことを意味します。
ご送金を受け取った男性は
現実に返さない限り
4,630万円全額が課税されることなります。
私の興味は、専ら
税務署が課税処分をするのかどうか
に移っています。
最高裁は
最高裁昭和46年11月9日判決は
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51937
以下のように判断し
実際に返金しない限り
課税所得を構成する
としています。
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課税の対象となるべき所得を構成するか否かは
必ずしも
その法律的性質いかんによつて決せられるものではない。
当事者間において
約定の利息・損害金として授受され
貸主において
当該制限超過部分が
元本に充当されたものとして処理することなく
依然として
従前どおりの元本が残存するものとして
取り扱つている以上
制限超過部分をも含めて
現実に収受された約定の
利息・損害金の全部が
貸主の所得として
課税の対象となる・・・
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経済的成果について
経済的成果の存否については
過去のコラムで言及しているので
こちらもご参照ください。
「経済的成果が…失われた」いうための要件を考える
以上