ムダの大切さ ~映画「愛なのに」トークショーで感じたこと

映画監督の今泉力哉さんと城定貞夫さんが
脚本と監督をクロスさせた映画
「愛なのに」
「猫が逃げた」
の2作品が公開中です。

今泉力哉さんが脚本を書き
城定貞夫さんが監督した
「愛なのに」
を先に見ました。

今泉力哉さんの脚本・監督の
「街の上で」
が好きなので
「愛なのに」
だけでもいいかなという思いもあり

「猫は逃げた」
を見る機会がないままになっていました。

先週の5/7(土)にtwitterを見ていたところ
ジャック&ベティのツィートで
「猫が逃げた」
の主演女優さんのトークショーが
その日に開催されることを知り
急遽、観に行きました。

レディコミの漫画家
旦那は同僚と
本人は担当編集者と
それぞれ不倫進行中
あとは離婚届にハンコを押すだけなのに・・・

主演の方は俳優経験がほとんどないのに
自然な演技である理由について問われ

映画では描かれていない日常を擬似体験するため
数ヶ月分の日記を書いた

と答えていました。

興味を持って他のインタビューを見ると

漫画を描くシーンがあり
実在する作品の作者を役名に変えて撮影するので
その作品の模写を繰り返して
違和感がないように練習もした

ということもおっしゃっていました。

役柄の職業や趣味に合わせて
事前に練習することは
よくあると思いますが

そこに至る感情を理解するために
日記を書くということは
私のような常人には思い至らないですし

自分の日記さえままならないのに
まして役柄という他者の日記など
書くというのはとてつもなく
シンドイと思います。

同じようなことを
濱口竜介監督の
「偶然と想像」の
「魔法(よりもっと不確か)」
に出演した玄里さんが仰っていました。

玄里さん演じるスタイリストの女性が
相性の良い男性と出会って盛り上がった話を
友人の女性モデルにしたところ
その男性はそのモデルの元彼であることがわかった
そのモデルの女性がとった行動は
というストーリーですが

映画ではスタイリストの女性と
男性の会話は描かれず
あくまでもスタイリストの女性の会話から
想像するしかありません。

しかし
玄里さんによれば
スタイリストの女性と男性の会話の脚本が用意されており
撮影しなかっただけで
実際にそのシーンを演じたそうです。

そのお陰で
スタイリストの女性の高揚感
が体感できたと言っていました。

黒澤監督の映画では
映画では映らないのに
箪笥の引き出しには
実際の生活では使うであろう
小物を入れていたそうです。

表には出てこない部分について
手を抜かないからこそ
表に出てくる部分の
分厚さを感じることができるのではないでしょうか。

似たようなことを
イチローさんも
國學院久我山高校の臨時コーチをした際に
仰っていました。

進学校でグラウンドを他の部と
交代して使わなければならない
國學院久我山の野球部は
効率的に練習しなければならず
あまりにも無駄がなさすぎる
無駄は重要ですよ
という趣旨のことを言っていました。

私に置き換えて言えば

10の知識が必要なことを問われて
ギリギリの10の知識で答えた文章と
100の知識中から10を抜粋して答えた文章では
文章の厚みというか凄みが違うと信じて

自分をアップデートするように戒めています。

以上