相続財産 法律と税務の取扱いの違い

直感的には
相続財産に含まれると思われるものであっても
法律上は
相続財産に含まれないものがあります。

代表的なものは
生命保険金です。

被保険者が被相続人(夫)
受取人が相続人(妻)
となっていることが多く

被保険者である夫の死亡により
受取人である妻に保険金請求権が発生する
という点で

相続による財産移転と似通っているので
直感的には
相続財産と思われがちです。

しかし
生命保険金は
被保険者である夫の生前財産ではないので
相続財産には当たりません。

ややこしくしているのは
相続税法3条です。

この条文は
法律上は相続財産ではないものの
相続税の申告にあたり
相続財産に含めて計算すべき
みなし相続財産を規定している条文ですが
生命保険金をみなし相続財産として規定しているからです。

つまり
生命保険金は

法律上は
相続財産ではないので
遺産分割の対象にはならないものの

相続税法上は
相続財産に含めて
相続税を計算しなければなりません。

遺族年金

厚生年金や国民年金などの被保険者が
亡くなった場合

遺族の方に対して
遺族年金が支給されます。

被保険者の死亡を契機とすることから
直感的には
相続財産に含まれると思われがちですが

遺族年金は
年金を規定する法律において
遺族の固有の権利に基づいて支給されるので
相続財産には当たりません。

したがって
相続人である遺族は
相続放棄をしても
遺族年金を受給することができます
(最判平成7年11月7日)。

◆タックスアンサー1605

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1605.htm

ややこしいのは
相続税法の取り扱いです。

相続税法3条1項6号によると
遺族年金はみなし相続財産に当たるものの

例えば
厚生年金法は41条2項において
課税を禁止しているので
結局
相続税の計算上
相続財産に含める必要はありません。

つまり
遺族年金は

法律上は
相続財産に当たらないのに対し

税務上は
みなし相続財産に当たるものの
税額計算上は
考慮しなくて良い

ということになります。

外国の遺族年金

それでは
外国の公的年金に加入していた夫が亡くなり
妻が遺族年金を受給していた場合には
どうなるのでしょうか。

前述の最高裁は
国民年金法の条文解釈を根拠として
相続財産には当たらないから
相続放棄の影響を受けない
と判断しました。

そして
相続税法上は
みなし相続財産に当たるけれども
厚生年金法などでは
課税が禁止されているので
税額計算上考慮する必要がありませんでした。

そうすると
外国の遺族年金は
 相続放棄の影響をうけるのか
 相続税の計算に含める必要があるのか
について考える場合には
外国の法律の規定次第
ということになりそうです。

下記の新聞記事によると
相続税における
外国の遺族年金の取り扱いについて
国税のスタンスは
みなし相続財産として課税する
というスタンスのようです。

https://digital.asahi.com/articles/ASR1C77LTR16ULFA01J.html?ptoken=01HSPRQ7CGK1BRGXKD5ZAR2QNM

記事によると
納税者側は争う姿勢とのことなので
最高裁の判断を期待したいところです。

以上