裁判所の回答にも間違いがある

今月9月4日、銃弾紛失の疑いがかかり、
違法な取り調べでうつ病発症した事件で
奈良県に損害賠償を命じた判決で
金額にミスがあった
という報道がありました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20230904/2050014502.html

私には他人事ばかりだと思っていたのですが
つい最近
裁判所からの回答に沿って処理したところ
その内容が間違っていた
ということがあったので

備考記録を兼ねて
書いておきます。

事案

調停離婚した男性の方が
元奥さんから
養育費が未払いであるという理由で
給与の差押えを受けた
ということで相談にいらっしゃいました。

持参していただいた証拠を見たところ
元奥さんが主張する期間の養育費は
いずれも振込済みだったので

本件を争うには
◆請求異議訴訟(民事執行法37条)
で債権が消滅していることを
訴訟で明らかにすることが必要になります。

もっとも
請求異議訴訟も
通常の訴訟手続きに則って行われますから
裁判の結論が出ることには
執行が終了してしまいます。

とくに
給与支払者に対する請求は
債務者送達から4週間経過しないとできないのですが

今回のように
養育費が債権となると
債務者送達から1週間経過すると
債権者である元奥さんは
相談者の勤務先に請求できるので
早急に対処する必要があります。

そこで
請求異議訴訟と併せて
◆執行停止の申立て(36条)
の裁判を起こして
執行を一時的にストップさせることになります。

受訴裁判所で発出した執行停止決定の正本を
執行裁判所に提出しないと
執行は止まらないのですが

本件では
 受訴裁判所 調停離婚をした家裁
 執行裁判所 相談者の住所地を管轄する裁判所
と受訴裁判所と執行裁判所が
異なる場所にあったので
移動時間もカウントして対応しなければなりません。

原則は

①受訴裁判所に対する
 請求異議の訴え提起
 同時に
 強制執行停止の申立て

②法務局に対する
 担保供託

③受訴裁判所に対する
 供託正本提出

④受訴裁判所から
 強制執行停止決定正本の受け取り

⑤執行裁判所に対する
 執行停止決定の正本提出

のように
受訴裁判所・法務局・執行裁判所
という複数の場所における手続きが必要です。

例外

しかし
受訴裁判所・法務局・執行裁判所
が場所的に離れている場合には
速やかに手続きを済ませることが困難です。

そこで
例外的に
請求異議の訴えを起こさなくても
●急迫の事情
がある場合には

★請求異議の訴えを起こさくても
★担保提供することなく

執行裁判所でも
強制執行停止を決定できる
とされています(法36条3項)。

本件では

本件では依頼を受けたのが木曜日の夜
翌金曜日午前中は別件で外出の予定

だったので
申立てのタイミングが金曜日の午後しかありませんでした。

そこで
36条3項の申立てを先行して行うべく
執行裁判所の担当窓口に費用等を照会したところ

3項の申立てを受け付けるのも受訴裁判所だけなので
執行裁判所である当裁判所では受け付けられない

という回答でした。

困った私は
受訴裁判所の事件受付係に同様の質問をしたところ

受訴裁判所は1項の申立ても3項の申立てもいずれも受け付ける
執行裁判所は3項の申立てを受け付ける

という回答でした。

そこで
再度、執行裁判所に受訴裁判所の回答を伝えると
今度は

3項の申立ては
受訴裁判所と執行裁判所のいずれも受け付けるが
急迫の事情が認められるとは考えにくいので
どちらの裁判所に申し立てるかは熟考した方が良い

という回答でした。

そこで
受訴裁判所に対し、

金曜日夕方に      3項の申立てを行い
翌週月曜日朝いちばんに 請求異議の訴え・1項の申立て・3項の申立ての取下げ

を行いました。

結論は

条文どおり
 受訴裁判所 1項の申立て
 執行裁判所 3項の申立て
というのが最終的な結論でした。

受訴裁判所の最初の回答も間違っていたのですが
執行裁判所の回答はいずれも間違っていたことになります。

結局
受訴裁判所で強制執行決定をもらい
執行裁判所に強制執行正本を提出しました。

受訴裁判所の電話応対のの印象も悪かったのですが
実際に会うと
ヒトとしての民度も低そうだったので
早く転勤してもらいたいな、と思いました。

以上

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