重加算税 税目による違い(2)

以前のコラムで
重加算税を課すことに
積極的な税目と慎重な税目とがあるのではないか
という私の印象を書きましたが

それを実感する事案に遭遇したので
守秘義務に抵触しない範囲で
考えてみたいと思います。

従業員による窃盗

法人税法の税務調査の結果
従業員が工事で余った材料を横流ししていたことがわかりました。

会社代表者も経理担当者も知らなかったのですが
益金の額に算入すべき金額が漏れていたとして
修正申告に応じることとしました。

そこまでは良いとしても
税務署側は交渉途中で
上記計上漏れは隠蔽によるものであるという
質問調書の作成を要求してきました。

従業員の隠蔽であるとしても
代表者も経理担当者も知らなかったですし
知ることができる状況でもなかったので

納税者である「法人」の「隠蔽」の故意があった
と評価できる客観的証拠は見当たらなかったので
故意を認める質問調書が欲しかったのでしょう。

最高裁は

最判昭和62年5月8日は

***********
法68条1項による重加算税を課し得るためには
納税者が故意に
課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を
隠ぺいし、又は仮装し
その隠ぺい、仮装行為を原因として
過少申告の結果が発生したものであれば足り…
************************

としていますから

隠蔽があったというためには
主観的要件として
故意が必要ですし
故意と同視できるほどの過失が必要といえます。

法人税の事務運営指針では

ところが
法人税の重加算税に関する事務運営指針では

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm

********************************
(隠蔽又は仮装に該当する場合)
  通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」とは、
例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。
 (1) いわゆる二重帳簿を作成していること。
 (2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。
  1 省略
  2 省略
  3 帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、
   売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。
 (3) 省略
 (4) 省略
 (5) 省略
 (6) 省略
******************************************************

とされにとどまり

主観的要件としての
故意について言及されていないのです。

つまり
上記の(2)3の規定ぶりからすると
収入の計上漏れがあれば
もれなく重加算税を課しなさい
という指示をしているに等しいといえます。

こうした事務運営指針をバックグラウンドにしていれば
税務署側の今回の対応も理解できるところではありますが
納税者サイドとしては納得できるものではないので
質問調書の作成は拒否しました。

以上

前の記事

映画 TAR/ター

次の記事

映画 アシスタント