財産分与における課税リスク

財産分与をした者に課税される場合

財産分与請求権(民法768条1項)に基づく財産分与であっても

 ■現金を交付するのか
 ■現物財産を交付するのかによって

税務上の扱いが異なります。

というのも、
 現金交付した場合には譲渡所得課税にはならないのに対し
 不動産などの現物財産を交付した場合には
 分与者に対し譲渡所得課税が行われるからです。

この点を明らかにしたのが
2021年1月14日のコラムでもご紹介した
最判昭和50年5月27日(民集29巻5号641頁)です。

これを受けて、所得税法基本通達33-1-4は
以下のように規定しています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm

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33-1の4《財産分与による資産の移転》 民法第768条《財産分与》
(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)
の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、
その分与をした者は、
その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
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譲渡所得が発生することを知らないと

財産分与における問題の一つは
それまで夫婦で済んでいた持家の取扱いです。
離婚する以上共有名義にするという選択肢はありえないからです。

他方、持家を売ってそれを半分にするということは
シンプルではありますが
持家は生活の本拠であったことからすると
そんなにドライな決着も難しいです。

そうすると、持家の半分を他方が買い取るだけの
キャッシュを用意するのも難しいので
持家の名義をどちらか一方の名義に変更するが行われます。

そこで問題となったのが

夫名義の持家を変更したことについて夫側に多額の税金がかかったことが
動機の錯誤に当たるとして登記の抹消請求が認められたのが
最判平成1年9月14日(集民157号555頁)です。

居住用不動産の特別控除

租税特別措置法には
居住用不動産を譲渡した場合
譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例が用意されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

したがって、分与義務者側の代理人になった弁護士としては
財産分与として名義を相手の名義に変更する場合には
この特例を活用できるかと検討する必要があります。

特に注意すべきは
 ①分与の時期
 ②別居期間
でしょう。

売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係であった場合には
この特例は使えないので

財産分与としての譲渡にこの特例を適用する場合には
婚姻関係が終了した後に分与する必要があります。

また、名義人が別居のためにその住居を出て3年が経過してしまうと
この特例は使えませんから、別居の開始時期を確認する必要もあります。

租税特別措置法は込み入った法律なので
弁護士としては、税理士に相談しながら
財産分与の条件を決めることが必須といえるでしょう。

最後に

平成元年の最高裁の事例は税法の解釈が争われた事案ではないので
当初の譲渡所得課税がどうなったのかまではわかりませんが
納税者は勝訴判決確定を受けて更正の請求をしたことは間違いないでしょう。

それよりも、私が知りたいのは、夫の代理人を務めた弁護士に対する
賠償請求が認められたのか否かです。

昭和50年最判がある以上
弁護士として知らなったことに過失がなかった評価できないでしょうから
賠償請求は認められた可能性が高いのではないでしょうか。

以上